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揀擇(カンテク) 太陽を抱く月 第4話解説(あらすじ含む)

      2019/12/18

キム・スヒョン、ハン・ガイン主演韓国ドラマ、太陽を抱く月(ヘルル プムンタル:해를 품은 달)第4話の解説(あらすじ含む・ネタバレあり)です。

『まさかおまえ、私とあの子のことで嫉妬しているのか?』と、ヨヌをからかう世子(セジャ:세자)『嫉妬は七去之悪(チルゴジアク:칠거지악)の一つ』と言ってからかう世子。

訳されてなかった『七去之悪』という言葉ですが、当時は女性が家を追い出される要件の一つに嫉妬がありました。だからヨヌが妻になると大変だといってからかっていたのです(笑)

 

太陽を抱く月130210a

 

さて、今回は揀擇(カンテク:간택)とそれにまつわる周辺の話をして行きましょう。

揀擇が始まったのは第3代太宗(テジョン:태종)の時からです。それまでは制度がなかったのですが、あろうことか子女のために太宗が婚礼話を持っていった相手がその婚礼を断るという事態が起こったため、制度化して断れないようにしたことが起源です。

簡単に言うと王または世子の嫁を選ぶための制度です。ステップは以下のとおりです。

 

  1. 嘉礼都監(カレドガム:가례도감)の設置  臣下による臨時の官庁で、国婚の事務をつかさどります。世子嬪(セジャビン:세자빈)の選定の場合には通常王族の長老女性が主導します。大妃(テビ)が存命でなければ中殿(チュンジョン:중전)が行います。
  2. 禁婚令(クモルリョン/クモンニョン:금혼령)  12~16・17歳の国民に対し婚礼を禁止します。両班以外も対象となります。年齢については婚姻する王子または王女の年齢が基準になるため変化します。
  3. 捧單令(ポンダルリョン/ポンダンニョン:봉단령)  自主的に單子(タンジャ:단자)を出せという令。書式に則った書で、名前や四柱(サジュ)などを言います。ヨヌの父が書いていたのがこれです。出さなくても良い条件に李氏であることや片親などがあります。女史が提出するものは処女單子(チョニョダンジャ:처녀단자)、男子が提出するものは童男單子(トンナムダンジャ:동남단자)です。
  4. 初揀擇(チョガンテク:초간택)  書類選考後30人前後が集められます。世子嬪(セジャビン:세자빈)揀擇の際には入宮のおりに釜の蓋を踏みます。これは朝鮮の風俗的概念で、釜の蓋は台所の象徴であり女の象徴であるためです。初揀擇では最終的に5~7人に絞ります。
  5. 再揀擇(チェガンテク:재간택)  5~7人から3人に絞ります。
  6. 三揀擇(サムガンテク:삼간택)  最終的に3人から1人に絞ります。三揀擇に残った3人は生涯婚姻できません。または後宮に入ります。
  7. 残った1人は実家に帰らず50日程教育を受けます。

 

太陽を抱く月130210b

 

世子嬪揀擇(セジャビンカンテク)は現代の基準からすれば王族の一員となるシンデレラ・ストーリーのように見受けられますが、実際には回避対象でした。

ドラマ内ではヨヌの兄ヨンが、三揀擇(サムガンテク)に漏れた際に生涯一人で過ごさねばならないことを危惧していましたが、世子嬪となれなかった2人は世子(セジャ)と婚姻したとみなされ、生涯独身を貫かねばなりませんでした。

例外としてドラマに登場するヤンミョン君の母・ヒビンのように、そのまま後宮に入ることがあります。実際に『王女の男』にも登場した悲運の王・第6代端宗(タンジョン:단종)は、三揀擇にもれた2人を後宮に入れています。

 

また、歴史的に見て、ドラマのように中殿(チュンジョン:중전)の座を外戚が狙うというのは老論(ノロン:노론)の頃からですので、第19代粛宗(スクチョン:숙종)代以降です。

それがエスカレートしたのが第23代純祖(スンジョ:순조)以降の安東金氏(アンドンキムシ)による勢道政治です。『太陽を抱く月』はフィクションですので、この時代のエッセンスも入っています。

 

朝鮮初期には、太宗が行った自身と息子・第4代世宗(セジョン:세종)の外戚をことごとく殺害した蛮行もあり、名門家門は揀擇(カンテク)を避けていました。名門同士で婚姻したほうが盤石な基盤を作ることができる上に、子女にとってもそのほうが幸せでした。

王または世子(セジャ)の婿・儀賓(ウィビン:의빈)についてもドラマで描かれていたように、政治的セーフティーシステムとして朝廷の運営に係る権限を持った官職には就けない法があったため、優秀な人材ではなく凡庸な人材が選ばれました。

このように、王族と縁を結ぶということは、現代人が考えるほどよいものではなかったのです。

 

【追記】粛宗(スクチョン:숙종)の第2継妃・仁顕王后(イニョンワンフ:인현왕후)の三揀擇(サムカンテク)後、他の二人の候補が嫁いだという論文を発見しました。ページ数が結構あるので、後日紹介します。

朝鮮は500年以上の歴史があるため時代により制度が一律ではありません。悩ましい(笑)

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