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王女の男21話 奴婢を使用人と訳すとは!?

   

王女の男(原題:公主の男:コンジュエ ナムジャ:공주의 남자)21話。

今回も歴史的な引っ掛かりがほとんどない回でした。ヒストリア、ピンチです。

そこで、今回はオリジナル音声で頻出した奴婢(ノビ:노비)についてお話します。

第21話の冒頭で、あまりの怒りに世祖(セジョ세조)セリョン申沔(シン・ミョン:신면)宅の使用人にするとありましたが、「使用人」と訳された言葉のオリジナルが奴婢(ノビ)です。

はっきり言って「使用人」は誤訳です。広辞苑を引けばわかりますが「雇われ、働く人」「使用人」です。なぜこのような訳語を選択したのか甚だ疑問です。

律令制は日本にも入ってきているため、奴婢(ぬひ)という言葉は歴史の勉強をしたことがあれば分かるレベルの日本語だと思います。あえて別の言葉を使ったということは、視聴者には理解できないだろうと思われたからなのでしょうか?それとも放送コード?

もし奴婢(ぬひ)と言う言葉が難しければ「下女(げじょ)」でも良かったように思います。「使用人」という言葉のニュアンスでは、「今日でやめさせて頂きます」と言って、職を辞することができるようなイメージです。

けれども、世祖がセリョンを奴婢にしたということは、そんなやわな処分ではなく、まさに苛烈を極めるといった処分でした。

 

奴婢(ノビ)には公奴婢(コンノビ:공노비)私奴婢(サノビ:사노비)があります。今回の処分ではセリョンは申氏宅の私奴婢にされるわけですが、要するに申氏宅のモノにされたのです。私奴婢とは生態学上は人であっても制度上は財産として馬などと同じレベルで扱われました。実際、ちょっと程度の良い馬なら奴婢よりも高価でした。

だから、セリョンはどんな官位をも超える尊い身分の公主(コンジュ:공주)からモノにされたのです。

※奴婢等についてはこちらのページを参照してください → 朝鮮王朝の身分制度

 

ちなみに、朝鮮時代の奴婢の値段は5~20両でした。もちろん時代によって物価も違うため一概に言えませんが、米1俵(80kg)が約1両だったので、米5俵から人が買えたわけです。セリョンの場合には若い美人ですから、もし流通するとこの範疇ではなく100両近い値がついたことでしょう。

ただし、物価については現代の感覚で考えてはいけません。コメ自体が非常に高価なものでした。第19代粛宗(スクチョン:숙종)時代の歩兵の初任給がコメ4マル(말:8kg)ですので32kgです。そこから計算すると歩兵の年収分で奴婢一人と等価になります。現代の価値にして3~400万円といったところでしょうか。

これらことがわかると「使用人」という安易な言葉では、意図するニュアンスが全く伝わらないことが改めて分かると思います。

※フィクションに乗っかっての説明ですので、セリョンは存在していませんので、世祖が娘を奴婢にしたという史実はありません。あしからず!

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